引きこもりたいのに引きこもれない
私はプータローであることと深酒のため、いつもより寝過ごした。コーヒーを一杯よけいに飲み、テレビを1時間よけいに観て、ハーフベーコンを一枚よけいに食べ、もう深酒と夜更かしはよそうと100回目の誓いを立てた。
引きこもる場所がない
今日も外は引きこもりにはおあつらえな雨模様だ。日本全国には推計70万人のニートがいる。私もその中に加えて欲しい。しかしどうやら私の希望は、希望の党が惨敗するように叶わぬ夢となるだろう。なぜなら、引きこもれる場所がないからだ。引きこもりたくても引きこもれないのだ。生活保護も年齢的に無理だし、実家では弟が一つしかない部屋を占拠している。ここの家賃は5万2千円。月に収入が15万円あれば生活には困らない。だが、それだけではバーにいくことができない。バーにはしゃれた身なりの女がいる。甘ったるいカクテルが女を誘うからだ。私には自由恋愛をする義務があるし、それをしない義務もある。だから、そう、ウェルカムドリンクはギムレットで決まりだ。
引きこもるお金がない
ヒグマは冬眠前と冬眠中にドングリやクルミで空腹を凌ぐ。ニートはというと、食事の世話はその親か配偶者か風俗嬢と相場は決まっている。私には助けてくれる殊勝な友人もいない。つまりお金がなければ、引きこもれないのだ。毎月指定された口座に黙っていても入金される不労所得もない。ノーマネー・ノーニート。チンケなチンピラというわけさ。
引きこもりたいのに引きこもれない
10月はハロウィーン月だ。渋谷のターミナルでは、コスプレ衣装を身に纏った発情期のレディたちが、狂ったオスたちからの誘いを今か今かと待ち望んでいる。だが、私には金もなければ、年も若くない。お呼びでない。だから行かないし、興味もないフリをする。茶番はごめんだ。10月の渋谷は36歳にはきつすぎる。私はニートになりたいわけではない。幸せになりたいのだ。私は私にだけしか聞こえない叫び声をあげた。
まとめ
「人は労働によって自分を知ることができる」
私はそんなセリフを思い出した。
日本の引きこもり人数がこれでマイナス1になった。理由は私が労働するからだ。推計69万9999人。私のような人間があと69万9999人いれば、日本の引きこもりは消滅するだろう。
静かすぎる眠りは存在しない。眠っているときには何か音を立てるものだ。静かな眠り、それは死体になったときだけだ。
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