親友ポコペンについて
ぼくの中学校時代にポコペンというあだ名の親友がいたことはご存じないだろう。ポコペンとぼくが国語の授業中に床に置いた将棋盤で将棋を指していると、すぐ国語の恵先生に注意されて一時休戦した経緯がある。
恵先生
国語の女教師、恵先生はぼくが中学三年のときに結婚した。
相手はどこの誰だかわからないが、ジーンズメイトのような洋服屋で彼氏と二人で買い物をしているところを見かけたことがあった。ぼくが恵先生にあいさつをすると恵先生は、ぽっと少し赤くなり照れた。ぼくも家族と一緒だったので少し恥ずかしかった。二人はすぐに店を出ていってしまった。なんか悪いことしちゃったかな。とぼくは思った。
そんな恵先生も学校では気丈な女だった。
中学三年生のぼくは寝ても覚めても将棋のことしか頭になかったから、国語の授業中に将棋を指していて一緒に怒られたポコペンにも悪いことをしてしまった。
ポコペン
ポコペンとはよく遊んだ。
ポコペンの家は山の中にあったから、ぼくの方から家に遊びに行った。ぼくの家から自転車で30分以上の遠い道のりをママチャリで登ったり下ったりしながら通った。家でも将棋をした。飽きると語り合った。ポコペンはタロット占いにハマっていた。ぼくの運勢も占ってくれた。吊るされた男が出た。いろいろと意味を教えてくれたが一切覚えていないのはご愛嬌。
時は経ち。
大人になってから久しぶりにポコペンの実家に電話を掛けた。
親父の図太い声が「もしもし」とだけ言った。ぼくは「浜田ですけど、トシユキ君いますか?」と聞いた。すると親父は「トシユキなんていません!」と怒鳴ってすぐ電話を切った。ガチャン。
とりつく島もなかった。
トシユキ君
ぼくは相手の名前を間違えた可能性を考えた。
しかし何度、頭の引き出しを開けてもトシユキしか出てこない。時間を経ると、もしかしたらトシヒコだったかもと思い直した。しかしやっぱりトシユキであっているような気がした。
もう一度電話してみようと思ったけど、かけるのは止めておいた。なぜかそうしたほうが良いように感じたから。
ぼくはポコペンのことを名前で呼んでいなかった。
だから名前を忘れてしまったのだ。まさか親父に「浜田ですけど、ポコペン君いますか?」とは言えない。たとえ言ったところで「ポコペンなんて知らん!」と一喝、ガチャンに違いないだろう。
ポコペンともう一度話したかったな。今ごろ実家の事業を継いで、結婚して子どもがいて幸せに暮らしているんだろうから、ぼくがしゃしゃり出る幕はないんだろうけども、あの頃のように暗くなるまで、一緒に語り合いたいな。
そういえば中学卒業間近にポコペンがぼくの未来を得意のタロットカードで占ってくれたっけ。内容はすっかり忘れてしまったけど、大器晩成、必ず大成するって言ってくれたと信じているよ。
浜田から親友ポコペンへ
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