いい夫婦とペアリングの話

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昨日は11月22日でしたね。「いい夫婦の日」に因んで、ゆる~い話を書いてみました。

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 本と指輪とぼくと妻

ぼくと妻は揃って本が好きだった。そんな妻が数日前に結婚指輪をなくしてしまったらしい。

 

ぼくとしてはがっかりだけど、実はぼくの方も結婚指輪をなくしてしまっていた。でもこのことに妻は気づいていないようだ。

 

思い出すと妻と付き合い出した二十歳のころ、一度プラチナのペアリングをプレゼントしたことがあったっけか、そのときはぼくの方がペアリングをなくして彼女にひどく怒られた記憶がある。その後彼女の方も自然とペアリングをつけなくなった。

 

 

ぼくと妻は仕事の関係で、今は休みがバラバラだった。このごろすれ違うことも多くなってきて、口げんかも増えた気がする。結婚8年目ともなると、どこもそんなものなのかもしれない。離婚とまではいかないが、結婚当初とは明らかに違ってきている。

 

ベットに横になりながら、ふと、平積みしてある本のなかに、やけに違和感のある本を見つけた。

 

その本を手に取りページをめくってみると、そこにあったのは探していたぼくの結婚指輪だった。こんなところに挟まっていたなんて・・・ぼくとしたことが、しおりの代わりに指輪を挟みこんでいたらしい。

 

あっ そうか!妻も同じように本のしおりにしているんじゃ・・・そう考えてぼくは妻の本が置いてある棚を眺めてみた。ぼくと違ってきれいに背表紙が揃えられてる本を横から縦からじっくり見てみたが、厚みに違和感のある本など一冊もない。試しに手で厚みを確認していくが、とくに異常はない。

 

几帳面な妻がそんなことするなんて、、、思い違いにぼくは肩を落とした。

 

 

夜になって妻が帰ってきた。

 

「おかえり」ぼくが言う。

 

「なんか食べた?」妻が買い物袋を重そうに床に置く。そのとき無くしたはずの指輪が妻の薬指にあることに気づいた。

 

「それより、あったんだ」ぼくはとっさに言い返した。

 

「あったって?」

 

「指輪だよ、結婚指輪」言いながら、ぼくは左手をあげた。

 

「ああ、そう、あった。・・・そっちこそあったのね」妻が聞く。

 

「あ、ああ」どうやら妻は、ぼくが数日前から指輪をはめてないことに気づいていたみたいだ。

 

「他にも何か挟まってなかった?」

 

「えっ、他にも?」困惑するぼくに妻がたたみかける。

 

「本よ、見てみて」

 

ぼくは隣の部屋に平積みしてある、あの本のページをもう一度めくってみた。なにやら最後のページに紙が挟みこんである。あわてて紙を開くと、「ベットの下を見て」の文字、、、

 

言われるがまま、ベットの下の床を探るとそこに金属の塊があった。拾い上げるとそれは、あの頃なくしたはずのプラチナのペアリングだった。

 

振り返ると、いたずらっぽく微笑む妻がそこにいた。

 

ぼくの手のなかで銀色のペアリングがきれいに揃った。