歌舞伎町 裏マージャン屋の仕事

昔話で恐縮だが、コメントにリクエストがあったので当時を思い出しながら書いてみたい。東京で裏カジノといえば歌舞伎町である。私はその仕事を東スポの求人欄で見つけた。

スポンサーリンク

歌舞伎町 裏マージャン屋の仕事

東スポの求人欄には職種、ゲーム喫茶という内容で募集されていた。「給料35万円以上!完全日払い、ゲーム喫茶店員男女急募!」みたいな感じだった。今から10年ほど前、私は歌舞伎町にある裏マージャン屋で働いた。

麻雀といっても雀荘ではなく、インベーダーゲームをプレイするような、真っ平らなゲーム機が雑然と並ぶ、少し古いタイプのゲーム屋だった。その当時、歌舞伎町では裏スロと呼ばれるゲーム屋が流行っており、客の大半はそちらの店に流れていた。私の勤めた裏マージャン屋は老舗と呼ばれる部類の古いタイプのゲーム屋で、来る客も当然年齢層は高かった。店には従業員が常に3人~4人いて、1日10時間~12時間拘束の休憩1時間。給料は翌日払いで日当12,000円。休憩中はできるだけ外に出るなと言われたが、私は狭い空間に何時間も閉じ込められ、息がつまりそうだったので、毎回時間いっぱい外出した。なぜ外に出ることを禁止しているかというと、人の出入りがあると警察に目を付けられるリスクが高まるらしい。

一応、看板らしきものは出していたが当然、初見の客は入れない、必ず誰かの紹介でないと入店できないシステムだった(これはどの裏カジノ、ゲーム屋でも同じシステム)。店のドアの前に監視カメラがあり、店長の許可がなければ絶対に開けることができない決まりになっていた。

ゲーム屋は違法なので捕まれば1ヵ月間拘留される。前科も付くのに給料が安すぎる。でも日払いで1万円以上もらえる仕事は他になかったので我慢して働いた。

仕事内容は単純だったが過酷を極めた。なぜなら物凄く性格の悪い先輩がいたことと、常に客の動きを見ていないとコインを渡す動作が遅れる為、客には怒鳴られる、先輩や上司にも怒られるので気を抜けないのだ。今考えると本当にアホらしい仕事だったと思う。ゲーム機が並んでいるホールに数名のスタッフが立ち、客が手を上げた瞬間に間髪入れずに、客の手元あるコイン入れに決められた枚数のコインを入れる。基本業務はこれだけだ。あとは客の注文したドリンクを作ったり、数時間おきのトイレチェックと清掃、仕事終わりの食品の買い出しなど、やっていることはほとんどお母さんの家事である。そのおかげで家事スキルは常人を遥かに超えるまでにアップした。あとは体力勝負。店は早番と遅番で分かれていて私は主に遅番で、夕方から早朝の5時過ぎまでの勤務だった。朝の歌舞伎町はカラス。ゴミを漁る猫。朝日がとても眩しく今にも溶けて無くなりそうだった。

 

余談だが、私が辞める少し前にこんなことが起きた。夜の買い出しは男性スタッフが交代で行く決まりになっていた。その買い出しで、当時バンドをやっていたKさんが店に血だらけになって帰って来たのだ。最後の清掃を終え、皆、帰りの遅いKさんのことを案じていた矢先、シャツは破れ顔や腕から血を流しながら店に入ってきたKさんを見て驚いた。Kさんいわく、買い出しが終わって店に帰る途中でチンピラ2人組に絡まれたらしく、肩がぶつかった謝れと言われ、謝らずにいるといきなり殴られ、そのままボコボコにされたと言った。もちろん警察には行けず、買い出しの荷物だけは何とか無事に持って帰ったと、悔し涙をにじませながら語っていた。

夜の歌舞伎町は本当に恐ろしい。自分の身は自分で守るしかないのだ。

私はその数日後、店を辞めることにした。