音ゲーの魔術師
中野駅からサンモール商店街を抜け、続く中野ブロードウェイにゲームセンターはあった。店内は昼でもうす暗く、タバコの白煙が充満していた。
中高年の社交場
ぼくはゲーム好き(と言っても、ここ十年はゲームの類をやってはいない)、普段はあまりゲームセンターには出入りしないのだが、ふと、気になったのでとりあえず入ってみることにした。
メダルコーナーは中高年の社交場だった。ばあさんとじいさんがメダルを握って空を拝んでいました。タバコの煙で霞みがかかった店内は、機械音と、メダルの擦り切れる音と、話声で耳が痛くなりました。とくにタバコの煙には目をやられました。
鼻からタバコの煙を吸い込んでいるおばさん、スナックのママ風の気取った小ぎれいなおばさん、カラフルなレインボーカラーのニット帽を被ったおばさん。じいさんはばあさんに比べると地味な服装でみな大人しく遊んでいました。
カップルたち
メダルゲーム満席の活況ぶりに驚きました。こんなにコインを増やしたい人がいるなんて。そんなに増やしてどうすんのかな。何か景品がもらえるのかな。
カップルたちが、メダルを大きな中央の機械に向かって投げ入れていました。楽しそうに見つめ合って、時折り笑ったりしながら、彼女の方は少し難しそうな真剣な表情で中央の画面を見つめていました。その横に座っている革ジャンの男が、スマホ画面から視線をそらさずに器用にメダルを投げ入れていました。
カップルでくればこんな騒音とタバコ臭のなかでも楽しく遊べるもんなんだなあと感心。ぼくも彼女ができたらこの劣悪な環境でコインを増やして笑い合ったりしたいもんだなあと、カップルに対して嫉妬に近い羨望を向けるのでした。
音ゲーの魔術師
白煙のアーチをくぐり抜けると「音ゲー」と呼ばれる音楽ゲームのコーナーに辿りついた。
指が踊っている少年がいた。音ゲーの魔術師。体は動かさずに指と腕が縦横無尽にダンスしている。ダンスダンスダンス。思わず写真を撮ってしまった。すいません。
すいませんと謝りつつ、ブログに載っけてしまった。あまりにも上手かったからお許しください。
写真じゃ上手んだか、どうだかわかりませんが、腕と指がこういう風に交差して、早すぎて、どのボタンをどのタイミングで押しているのか、まったくわかりませんし、見えません。それでいて彼は画面を凝視している。
これだけの才能を社会人になって生かさないのはもったいない。もったいないけどゲームのプロは日本にはまだ馴染みがないから、彼は今後どのような生き方をしていくんだろうか。せっかくだから才能を生かしてほしいな。
日本でも早くゲームのプロで飯が食っていける環境が整えばいいなと、彼の華麗な指さばきを見つめながらひとり思うのでした。ぼくは見ているだけでとてもやる勇気は出なかった。すごい少年がいたもんだな。
帰り際、メダルコーナーでじいさんがまたメダル握って空を拝んでいました。
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